Last-modified: 2023-07-29 (土) 07:50:50 (58d)
【しらせ】 †
AGB-5002/AGB-5003 JS Shirase.
日本の海上自衛隊が保有する砕氷艦。
1982年に就役し、2008年に退役した初代*1と、同艦の後継として2009年に就役した二代目が存在する。
本項では両艦に共通する項目を扱い、個々の艦の事情についてはそれぞれのページに記述を譲る。
書類上の帰属は日本政府・文部科学省隷下の国立極地研究所。
船舶としての運用は防衛省(海上自衛隊)に委託されている。
通称は「南極観測船」で、実際に南極圏の気象観測などにも用いられるが、主たる用途は南極の観測基地(昭和基地)への物資補給・人員輸送である。
命名の由来は南極大陸の地名「白瀬氷河」から。
この白瀬氷河は南極探検で功績を残した探検家・
このため、日本の船舶命名規則では忌避される「人名に由来する命名」が為された唯一の公船となっている。
初代の就役時、この命名に関して旧海軍出身者から「軍艦に陸軍軍人の名をつけるとは何事か」との批判があったという。
なお、この批判が軍艦(自衛艦)の命名規則を破った事を問題視したのか、白瀬氏の経歴(旧陸軍予備輜重兵中尉であった)を問題視したのかは定かでない。
運用について †
本艦は、自衛艦としての編制上では横須賀港を母港とする。
しかし、運用スケジュールは他の自衛艦と大幅に異なっている。
- 8月下旬〜10月初旬
- 乗員の訓練を兼ねた日本一周航海を行う。
この時、寄港した日本各地の港で一般公開を行う*2。 - 11月初旬
- 観測隊の物資を搭載して東京・晴海埠頭から出港。
- 12月半ば〜翌年1月初旬
- 南極へ入り、昭和基地に到着。観測隊員を上陸させ、物資を搬入する。
昭和基地への補給は例年この1回のみ。 - 翌年2月
- 研究資料・廃棄物*3・観測隊員のうち前年度の越冬隊員及び越冬する予定のない者(南極の冬は7〜9月)を載せて帰途に就く。
隊員の3分の2ほどは越冬しない「夏隊」。
また、女性隊員の妊娠検査を行い、妊娠が発覚した者は強制帰国となる*4。 - 4月初旬
- 東京へ帰港して物資を降ろした後、横須賀へ入渠して艦体を整備。
元々は、観測隊員も東京港で乗下船していた。
しかし、近年では観測隊員は砕氷艦の東京出港後、飛行機などでオーストラリアへ向かい、そこで砕氷艦に乗船・下船するようになっている*5。
*1 現在は「一般財団法人WNI気象文化創造センター」が所有し、気象情報サービス会社「ウェザーニューズ社」が気象観測船として運用している。
*2 なお、現在は新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により、一般公開は行われていない。
*3 国際条約により、南極圏に廃棄物を投棄することは許されていない。
*4 昭和基地の医療施設では新生児医療が不可能なため。
*5 帰路は逆になり、観測隊員の方が先に日本へ帰ってくる。